「無職転生〜異世界行ったら本気出す〜」第5話【感想】

第5話「暴力とお嬢様」ルーデウス先生になる。

ルーデウスが父親に斡旋された仕事は、暴力的なお嬢様エリスの家庭教師だった。

魔術を勉強をしようとしないエリス。ルーデウスは自ら魔術を勉強したいと思えるような状況を作り出すため、エリスを誘拐させる計画を実行する。

使用人の裏切りがあり、ルーデウスの計画は失敗に終わる。

しかし、エリスが典型的なツンデレのデレの部分を披露し、なんとかルーデウスは仕事を続けられることになった。

赤髪でツンデレなお嬢様なんて、10年どころか20年前のライトノベルみたいな設定だ。ところがエリスがデレるシーンを見ると、古臭いというよりは、懐かしさと、期待する王道展開をそのままやってくれたというストレートな気持ち良さを感じる。

こんな直球を心地良く受け止められるのは、ツンからデレまでの過程に無理がないからではないだろうか。誘拐されたエリスは、誘拐者相手に自分がこれまで培ってきた暴力が通用せず、ボコボコにされる。血は出るし、歯は抜けるし、めちゃくちゃボコボコ。そこから、ルーデウスの魔術の力で脱出することができるのだ。心が動くのも当然と言える。

新しく登場したヒロインが、大昔に大量生産された画一的なツンデレキャラではなく、生きた感情を持ったツンデレ少女で、気分が良い。というのも今回の魅力ではあるが、その他にもいくつか気になった事がある。

ルーデウスの教育

魔術を勉強したがらないエリス。そもそも力が強いから、魔術を勉強する必要性を感じていない。そんなエリスに無理矢理、勉強させようとしても反発するだけなので、自発的に勉強をしたいと思わせないといけない。

生前の主人公は、高校時代にいじめられていることがわかる。その後、大学へ進学したのかは分からないが、教育に関する知識はその辺りで、ストップしているはずである。教育とは知識を教え込むものではなく、学び方を教えるもので、そのスタートである学びたいという意欲が大切である。このような教育観はどこで身につけたものなのだろうか。

主人公は学校にトラウマを抱えており、とうてい学びたいと思えるような環境ではなかっただろう。しかし、生まれ変わってからは、自分から魔術を学びたいと思って、魔術が身に付いていく喜びを味わっていく。学びたいとすら思えなかった経験と、学びたいと思う事で成長できた経験、そのどちらも味わえた主人公だからこそ、学びたいと思う気持ちの大切さを実感として理解していたのではないだろうか。この実感は、教育大学でどれだけ講義を受けるよりも、深く教育観の形成に影響したに違いない。

教育観もそうだが、考えた計画もすばらしい。考えた本人は失敗だったと評しているが、お嬢様に魔術を勉強させる気を起こさせる事自体は成功していると言える。

学習指導要領というものが文部科学省から出されている。これは、子供達をこんな風に指導していきましょうという、全国共通の基準である。この学習指導要領に「生きる力」という言葉が盛り込まれて以来、学校現場では、知識を詰め込むのではなく、将来、社会に出た時に役立つ力を子供達につける方法を模索してきた。

そんな中で、現実感のあるシナリオを設定し、学んだ知識を活用して解決するパフォーマンス課題が日本で用いられるようになった。

学んだ力が活かされる場面を想定したシナリオを設定し、提示することで、学ぶ事へのモチベーションを上げるやり方は、パフォーマンス課題の考えに通ずるものがある。

教育観だけでなく、教材の作成にもセンスを感じる。

外に出るというトラウマを克服したルーデウスの現在の目的は何なのだろうか。学校へ行って、高度な魔術が使えるようになったとして、その先には何があるのか。

学ぶ事に対して、素晴らしい価値観を持っているルーデウスが、学ぶだけで終わってしまうのはもったいない。学んだ力をどのようにこの世界で活かしていくのか、見ていきたい。

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